開催日 | : | 平成24年8月11日(土)〜平成24年9月23日(日) | |
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開館時間 | : | 午前9時〜午後5時(入館は午後4時30分まで) | → 展示情報詳細はこちら |
会場 | : | 田原市博物館「企画展示室」 |
企画展示室 | ||||||
Ⅰ 花鳥が出逢う水辺 | ||||||
出品番号 | 図録番号 | 指定 | 作品名 | 作者名 | 時代 制作等 | 法量(単位㎝) |
1 | 2 | 夏景聚禽図 | 邉楚善 | 中国・明時代 | 161.4×86.4 | |
2 | 3 | 四季花鳥図屏風 | 伝 雪舟等楊 | 室町時代 | 158.8×348.7 | |
3 | 8 | 染付芙蓉手花鳥文皿 | 中国・明時代末期 景徳鎮窯 | 口径51.5 | ||
4 | 11 | 蓬莱山蒔絵硯箱 | 江戸時代前期 | 23.2×22.1 | ||
5 | 16 | 重美 | 青磁象嵌蒲柳鷺唐子文浄瓶 | 朝鮮・高麗時代 | 高37.2 | |
6 | 17 | 古九谷色絵松竹鶴文大皿 | 江戸時代前期 | 口径28.8 | ||
7 | 18 | 鍋島色絵青海牡丹文皿 | 江戸時代中期 | 口径19.7 | ||
8 | 19 | 柿右衛門色絵花鳥流水文蓋物 | 江戸時代前期 | 口径21.2 |
Ⅱ 文様の美を競う | ||||||
出品番号 | 図録番号 | 指定 | 作品名 | 作者名 | 時代 制作等 | 法量(単位㎝) |
9 | 21 | 堆黒双鳳牡丹文盆 | 中国・元時代 | 径31.5 | ||
10 | 25 | 堆朱蓮池水禽文稜花盆 | 中国・明時代中期 | 径34.5 | ||
11 | 27 | 堆朱牡丹文分銅形盆 | 江戸時代後期 | 径27.8 | ||
12 | 28 | 堆黒八仙人花鳥文食籠 | 中国・明時代 | 径23.2 |
Ⅳ 富貴花の展開 | ||||||
出品番号 | 図録番号 | 指定 | 作品名 | 作者名 | 時代 制作等 | 法量(単位㎝) |
13 | 30 | 春園富貴図 | 田能村竹田 | 江戸時代後期 | 112.2×32.9 | |
14 | 32 | 青磁刻花牡丹文多嘴壺 | 中国・北宋時代 越州窯 | 高33.5 | ||
15 | 33 | 青磁刻花牡丹文鉢 | 中国・北宋時代 耀州窯 | 口径23.9 | ||
16 | 38 | 青磁刻花牡丹唐草文梅瓶 | 中国・元時代末期〜明時代初期 景徳鎮窯 | 高38.0 | ||
17 | 39 | 青花牡丹唐草文梅瓶 | 中国・明 永楽時代 景徳鎮窯 | 高32.6 | ||
18 | 40 | 青花鳳凰牡丹唐草文鉢 | 中国・元時代 景徳鎮窯 | 口径30.5 | ||
19 | 41 | 青呉州鳳凰牡丹唐草文皿 | 中国・明時代末期 _州窯 | 口径43.8 | ||
20 | 46 | 法花牡丹文梅瓶 | 中国・明 嘉靖時代 | 高28.3 |
Ⅴ 幻想世界に迎えられた鳥たち | ||||||
出品番号 | 図録番号 | 指定 | 作品名 | 作者名 | 時代 制作等 | 法量(単位㎝) |
21 | 49 | 鳳凰図 | 伝 王立本 | 朝鮮・朝鮮王朝時代 | 57.5×32.0 | |
22 | 50 | 鳳凰孔雀図 | 伝 周之冕 | 江戸時代 | 各104.1×47.1 | |
23 | 52 | 銀製双鳳花文六花形盤 | 中国・遼時代 | 口径17.9 | ||
24 | 55 | 鴛鴦双鵲文八稜鏡 | 中国・唐時代 | 径23.9 | ||
25 | 57 | 青花龍鳳文輪花形面盆 | 中国・明「大明万暦年製」銘 景徳鎮窯 | 口径35.8 | ||
26 | 59 | 柿右衛門色絵花鳥文大鉢 | 江戸時代前期 | 口径33.2 | ||
27 | 61 | 存星花鳥文食籠 | 中国・明時代末期〜清時代前期 | 径33.5 | ||
28 | 63 | 重美 | 金襴手孔雀文共蓋仙盞瓶 | 中国・明 嘉靖時代 景徳鎮窯 | 高21.1 | |
29 | 65 | 色絵孔雀牡丹文皿 | 江戸時代前期 肥前窯 | 口径22.5 |
Ⅲ 人々に愛された花鳥の主題 | ||||||
出品番号 | 図録番号 | 指定 | 作品名 | 作者名 | 時代 制作等 | 法量(単位㎝) |
30 | 68 | 枯木山鳩図 | 谷文晁 | 江戸時代後期 | 51.5×79.5 | |
31 | 70 | 柿右衛門色絵梅鴬文八角鉢 | 江戸時代前期 | 口径25.7 | ||
32 | 71 | 柿右衛門色絵花鳥文蓋物 | 江戸時代前期 | 高36.6 | ||
33 | 72 | 鶏図 | 立林何帛 | 江戸時代 | 100.6×46.0 | |
34 | 73 | 柿右衛門色絵鶏 | 江戸時代前期 | 各高22.4 | ||
35 | 76 | 柿右衛門色絵鸚鵡 | 江戸時代前期 | 高41.2、高38.6 | ||
36 | 82 | 吉野・龍田図屏風 | 桃山時代 | 各154.5×358.0 | ||
37 | 83 | 花車図屏風 | 江戸時代 | 153.5×344.0 | ||
38 | 未掲載 | 五彩花鳥文碗 | 中国・明時代 景徳鎮窯 | 口径12.0 | ||
39 | 未掲載 | 鍋島色絵金銀彩花籠文皿 | 江戸時代前期 | 口径20.0 | ||
40 | 未掲載 | 古九谷色絵花鳥図菱形皿 | 江戸時代前期 | 各10.8×15.4 |
※期間中、展示を変更する場合がございます。また展示室は作品保護のため、照明を落としてあります。ご了承ください 。
● 1 夏景聚禽図
叭々鳥や雀が中空を舞い、生い茂る竹と海棠には頬白、鶯、燕などが群れ集う。花鳥の種類は変化に富み、個々の描写は細緻をきわめている。抑揚が効いた植物の輪郭線や落ち着いた鳥類の色調は、見ているだけで快い。いずれも実感豊かに描かれているが、特に右下の叭々鳥を見てほしい。一部を水中に浸した尾羽の表現、また、水に濡れた胸毛の質感をいくつかの毛束によってあらわす点など、実に細やかである。
● 2 四季花鳥図屏風
室町時代の画僧・雪舟は、中国・明時代の絵画を参考に花鳥図を手がけた。今日、雪舟筆と伝えられる屏風は十数点にのぼるが、作風は一様ではなくそれぞれに異なる魅力がある。本図の特徴は、樹木や岩を前景に押し出し、その奥に広がる光景を見るものの想像にゆだねるところにあろう。かたどられた樹木は華奢で、蓮花の柔らかな色彩もこの絵の瀟洒な印象によく合う。五羽の鳥たちは、注意しなければ見落としてしまうくらいに控えめだ。
● 4 蓬莱山蒔絵硯箱 江戸時代前期
鳥たちが心安く集う水辺の景は、工芸品の主題にも多くみられる。蓬莱山(ほうらいさん)は、中国の伝説に登場する不老不死の地だが、硯箱は、優美な和様の雰囲気を漂わせている。梅花には螺鈿(らでん)が使われ、花びらは時に青白く、時に淡紅色にきらめく。
● 5 青磁象嵌蒲柳鷺唐子文浄瓶 重要美術品
朝鮮半島では、古くから金属器が尊ばれ、金属器の形や意匠を範とした陶磁器が多い。たおやかな姿の高麗青磁の浄瓶も、青銅など金属製の浄瓶に倣った作である。胴には水辺の風に揺られる柳樹と、白鷺などの水禽をあらわしている。灰青色の釉(ゆう)肌(はだ)は静けさを湛え、空と水があいまいに溶け合う空間を穏やかに作りだし、鳥たちはその温雅な空気に安らいでいる。
● 6 古九谷色絵松竹鶴文大皿
藍彩と緑彩で、松と竹、川波をあらわす。波間には、その姿を半ば沈めた片輪車を描き、濃厚な色彩をどこか典雅な、王朝風の世界へとみちびいている。色と白磁のコントラストは、水面や木々の瑞々しさと、これを包む空の光のようでもあり、大皿の中に、植物、水、鳥の織りなす世界が見事に表現されている。
● 7 鍋島色絵青海牡丹文皿
波間の牡丹は、片輪車の意匠のように、その姿を半ばあらわし、波の上の牡丹は、海原に沈みゆく太陽のように、あでやかで大きい。波に比べて、非現実的なほどに大きく描かれた牡丹の花は、花と水辺という、ありふれたモチーフを、現実を超えた美々しい意匠へと、力強く再構成している。
● 8 柿右衛門色絵花鳥流水文蓋物
白磁の上に、浮彫であらわした繊細な波文様の上を、千鳥と花々が香り高く流れてゆく。光と影だけであらわされる波文様は、浮世絵における空(から)摺(ず)りを思わせる、心にくい技巧といえよう。蓋の内面には、広げた羽をつなぐような形で一対の鳳凰が描かれ、その内側に宝珠を守っている。
● 12 堆黒八仙人花鳥文食籠
八角形、三段に作った食籠。朱地に黒の漆を重ね、上部蓋面には仙人を、胴部には団扇形に窓枠をかたどった中へ、各々異なる花鳥の文様を彫り出してある。梅、椿、海棠などの花卉にさまざまな鳥の番いを合わせる。正面となる部分へは牡丹、鳳凰、太湖石の文様をあらわしている。
● 13 田能村竹田 春園富貴図
題字、落款の書体から享和から文化年間ごろの作と考えられる本図は、水墨主体であった当時の作品の中では珍しい極彩色のいわゆる富貴図である。紅・白に紫色と三種の牡丹が大輪を咲かせ、その下に大きな太湖石を描く。群青と緑青によって薄く丁寧に塗り重ねたところへ、激しい点描で表情を付ける。また土坡にも同じように細かな点描が見える。青年期の竹田が中国画に憧れながら倣っていた足跡を知る。
● 14 青磁刻花牡丹文多嘴壺
胴部に牡丹文を刻む。胴の下部には蓮弁があらわされている。蓋は蓮葉と蓮弁の形状を模して組み合わせたものとなっている。
● 16 青磁刻花牡丹唐草文梅瓶 17 青花牡丹唐草文梅瓶
明時代の景徳鎮窯でも、それまでの文様を受けて展開した青磁刻文や青花の梅瓶が数多く作られていた。青磁刻文では、ふっくらとした牡丹の花弁に、二重の蔓と整理された葉の文様でバランスをとり、三層の空間を飾っている。一方青花では強い色調で牡丹がすっきりと描かれており、器面を明るく飾る。蔓は大胆にうねりながら、余白を十分に確保しておおらかさを見せている。
● 18 青花鳳凰牡丹唐草文鉢
見込み中央部から八方、外方向へ雲気文と抽象的な文様を描く。さらにその外へは二段分、順に牡丹唐草文と鳳凰牡丹唐草文を施している。また口縁部は、細い二重線の帯内に簡略な唐草文を配している。これらの特徴は同じく元時代の梅瓶に通じているが、見込みの最も深い部分の文様が、梅瓶では下部にあたるところから、逆順に上部へと重なる形式の構成をとっている。
● 19 青呉州鳳凰牡丹唐草文皿
青と赤の色彩が器面に映えて清々しい。文様は、中央部の円の中に蓬莱を描き、その外側へ鳳凰と牡丹を唐草文によってつないである。外縁部には、いわゆる荒磯文と呼ばれる魚貝ほか海に関わる文様が流れるように描かれ、ゆったりと旋回する。このような文様構成の淵源は、唐時代の神聖なる古鏡にまでさかのぼって求められる。
● 20 法花牡丹文梅瓶
法花とは、「イッチンモリ」と呼ばれる技法で文様の輪郭線を盛り上げ、境界の内側へとそれぞれ異なる色の釉薬を流し込んで、七宝風な装飾文様を表現するものである。これらは中国・明時代後期の作品で、正面に大胆な牡丹の文様を据えており、ほぼ左右対称の図様に仕上げてある。宝飾的で金属器の装いも醸している。
● 21 伝 王立本 鳳凰図
中国の伝説上の瑞鳥・鳳凰は、さまざまな動物の特徴をあわせ持つ。本図に描かれたつがいの鳳凰は、ほぼ左右対称の関係で体を交差させている。ただし、二羽のかたちはぴたりと重なるわけではなく、細やかな違いもある。雄である鳳は嘴を広げ、羽の形態は雌の凰よりも先鋭的。中国の絵師・王立本筆の伝えを持つが、二羽の間にある不自然な水流の痕跡などは、この絵が何らかの手本を元に描かれたことを示唆している。
● 22 伝 周之冕 鳳凰孔雀図
鳳凰と孔雀を双幅に描き分ける趣向がたいへん珍しい。中国・明末に活躍した周之冕の作と伝わるが、その可能性は低いだろう。鳳凰の首や胴のフォルムには崩れたところが見え、周囲の樹木や岩の表現も粗略に過ぎる。それでも、鳳凰と孔雀のそれぞれの羽などはたいへん丁寧に仕上げられ、その色彩表現や細部の描写は優れて魅力的である。たとえば、鳳凰の羽の模様が、金泥の細線で丹念に描き起こされていることなどに注目したい。
● 24 鴛鴦双鵲文八稜鏡
中国・唐時代の古鏡で、シンメトリーにつくるものや、円形の構図で花鳥のモチーフを旋回させるものが基本となっている。
● 27 存星花鳥文食籠
存星は、上塗りして研ぎだした素地の表面に色漆で文様を描き、これに輪郭と細部の線彫りを加える技法。蓋甲面には牡丹と鳳凰などを描く。華麗な存星は日本でも愛好され、同趣の食籠の伝世品も数点知られている。
● 28 金襴手孔雀文共蓋仙盞瓶 重要美術品
金襴手の仙盞瓶は、いわゆる水注として用いられた。胴部には桃形の窓をつくり、その中へ金彩で雌雄の孔雀を描く。背景には牡丹文を配している。窓の外側には蓮弁や牡丹花などの文様を丁寧に描いている。
● 29 色絵孔雀牡丹文皿
白い器面の内側に色紙形を描き、そこへ片足で立ち、後方を振り向く孔雀の姿を描く。両脇には大きな牡丹の花を配している。青味のある緑に黄色、朱など色絵を使い分けた絵画的描写が光っている。また色紙形の周辺へは細かく宝珠のような文様を赤絵で敷き詰め、額縁風に仕上げている。
● 30 谷文晁 枯木山鳩図
二種の墨を使い分け、筆の勢いそのままに引かれた枯木が、鋭く屈折しながら左方へと枝を伸ばす。その上にとまる番いの鳥は、山鳩(青鳩ともいう)か。右端の一羽は、枝葉に潜む虫を見つけたのだろうか、身を乗り出し上体をひねった挙措をとる。鳩の背から頭にかけて施された緑青(ろくしょう)が、上質な輝きを放っている。
● 34 柿右衛門色絵鶏
同一の土型からつくられた鶏の香炉で、頸から上がはずれるように作られてある。嘴の先は開けてあり、煙出しとなっている。白色の鶏と五彩による色鮮やかな鶏が一対となっている。柿右衛門の精巧な型物は、このほか狛犬や美人像などの置物がある。
● 35 柿右衛門色絵鸚鵡
色絵で飾られた鸚鵡(おうむ)は、柿右衛門の置物作品の中でも優れた出来映えのものである。枯木につかまり整然とした姿と、彩り豊かな羽の様子によって表現された鸚鵡の凛々しさには、異国情緒が漂う逸品である。なお本作には台座が添えられており、輸出されて海外で鑑賞されたことがわかる。
● 36 吉野・龍田図屏風
桜と楓の巨樹からは枝が自在に伸び、紅・白の対照的な花葉が画面を覆いつくす。古来より、桜といえば吉野、楓といえば龍田と決まっているが、ふたつの名所の華やぎは絵のなかで無限に増殖しつづける。装飾的な要素を極限まで突きつめたような絵画だ。とりわけ胡粉を盛り上げてつくる桜の花弁は、その印象をひときわ強める。どこまでも広がる桜花と楓葉には、繁茂をやめない生命のエネルギーがみなぎっている。
● 37 花車図屏風
花車とは、花籠を牛車(うしぐるま)に載せたものをいう。江戸時代以降、歌舞伎や染織の文様に取り入れられ、絵画の主題としても流行した。本図に描かれた菊や牡丹、桔梗といった草花は変化に富み、個々の描写は細密をきわめる。なかでも、一部の菊が大胆な胡粉盛り上げによってあらわされ、エナメルのような無機質な輝きを放っているのが印象的だ。左下に「永徳筆」と書き込まれるが、そのまま狩野永徳を筆者と信じるのはむつかしい。