愛知県美術館サテライト展示「所蔵作品による 川瀬巴水展」

開催日 前期:平成22年8月28日(土)〜9月20日(月・祝)
後期:平成22年9月22日(水)〜10月17日(日)
開館時間 午前9時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
会場 企画展示室2

展示作品リスト

企画展示室2(後期)
No. 作品名 シリーズ 制作年 点数 所蔵先
1 金沢ながれのくるわ 旅みやげ第一集 大正 9(1920)年 1 愛知県美術館
2 出雲美保ヶ関 旅みやげ第三集 大正13(1924)年 1
3 芝増上寺(雪中) 東京二十景 大正14(1925)年 1
4 大坂天王寺 旅みやげ第三集 昭和 2(1927)年 1
5 桔梗門 東京二十景 昭和 4(1929)年 1
6 大宮見沼川(とびかう螢)   昭和 5(1930)年 1
7 品川 東海道風景選集一 昭和 6(1931)年 1
8 名古屋城 東海道風景選集 昭和 7(1932)年 1
9 大坂宗右衛門町の夕 日本風景選集 関西編 昭和 8(1933)年 1
10 尾州瀬戸 東海道風景選集 昭和 9(1934)年 1
11 鳴沢の富士   昭和11(1936)年 1
12 信州木崎湖   昭和16(1941)年 1
13 東海道 日坂 東海道風景選集一 昭和17(1942)年 1
14 岡山のかねつき堂   昭和22(1947)年 1
15 みのくに谷汲寺   昭和22(1947)年 1
16 春の夕(上野東照宮)   昭和23(1948)年 1
17 清水寺の暮雪   昭和25(1950)年 1
18 大和壷坂寺   昭和25(1950)年 1
19 吉野川 柳の堀   昭和25(1950)年 1
20 明治神宮 菖蒲田   昭和26(1951)年 1
21 桜田門の春雨   昭和27(1952)年 1
22 舟津の秋   昭和28(1953)年 1
23 鵜飼(長良川)   昭和29(1954)年 1
24 塩原畑下の雨   昭和30(1955)年 1
25 平泉金色堂   昭和32(1957)年 1
企画展示室2(前期)
No. 作品名 シリーズ 制作年 点数 所蔵先
1 井之頭の残雪 東京十二題 大正9(1920)年 1 愛知県美術館
2 飛騨中山七里(雪中) 旅みやげ第三集 大正13(1924)年 1
3 信州松原湖   昭和16(1941)年 1
4 天草本渡祗園橋 日本風景選集 大正13(1924)年 1
5 御茶の水 東京二十景 大正15(1926)年 1
6 尾州亀崎   昭和3(1928)年 1
7 馬込の月 東京二十景 昭和5(1930)年 1
8 市川の晩秋   昭和5(1931)年 1
9 雪の向島   昭和6(1931)年 1
10 春の雪(京都清水)   昭和7(1932)年 1
11 奈良春日神社   昭和8(1933)年 1
12 讃州豊浜 日本風景選集二 関西編 昭和11(1936)年 1
13 田子の浦の夕 東海道風景選集 昭和15(1940)年 1
14 忍野の富士   昭和17(1942)年 1
15 河原子の夜の雨   昭和22(1947)年 1
16 宮島の月夜   昭和22(1947)年 1
17 塩原の秋(天狗岩の下)   昭和25(1950)年 1
18 大和初瀬寺   昭和25(1950)年 1
19 京都大原三千院   昭和24(1949)年 1
20 時雨のあと(京都南禅寺)   昭和26(1951)年 1
21 富士之雪晴(忍野附近)   昭和27(1952)年 1
22 大手門之春之夕暮   昭和27(1952)年 1
23 松山城 名月   昭和28(1953)年 1
24 勿来の夕   昭和29(1954)年 1

※期間中、展示を変更する場合がございます。また展示室は作品保護のため、照明を落としてあります。ご了承ください 。

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作品紹介

川瀬巴水の木版画

 大正から昭和にかけて、渡邊版画店という版元から「新版画」と名づけられたシリーズが出版されました。これは浮世絵の伝統的な木版技法と西洋風の写実的な表現を融合させた新しい版画表現を目指したもので、橋口五葉や伊東深水の美人画が有名ですが、彼らと並んで風景画に優品をのこした画家が川瀬巴水(明治16(1883)−昭和32(1957))です。
 巴水は東京で糸問屋の長男に生まれましたが、27歳で日本画家の鏑木清方に入門し、35歳の大正7年(1918)から版画を主としました。彼は実際に日本全国を歩き、各地の自然や風俗を実感こめて表して、「昭和の広重」「旅情詩人」などと呼ばれました。約600点の作品の中で巴水は気象の変化や生活の寸描を重視し、また画づくりの上では江戸時代の版画に無かった陰影を生かし、近景の建物や橋・樹木・大岩などを重々しく沈めて画面に奥行きを感じさせるとともに、遠景の明るさや色彩を際立たせています。色彩の表現では、青い夜空と月の光、夕焼けや早朝などの微妙な美しさに特徴があり、建物の赤や青によって白さを強調された雪景色なども見事です。
 巴水と同じ時代には、画家が版木の彫りや摺りも自分でおこなって、複製目的ではない版画表現をめざした「創作版画」も盛んでしたが、「新版画」では、専門の彫師や摺師の高い技術に支えられた繊細な線描や清澄な色彩も見どころとなっています。巴水の作品は出版当時から特に海外で人気を得て、欧米の美術館での収蔵や全画集の発行がされていましたが、没後50年を記念した展覧会などにより国内でも再注目され、近年あらためて評価が高まっています。
 愛知県美術館は2007年、川瀬巴水の作品73点の寄贈を受けました。それらは岐阜県恵那市明智町の日本大正村の施設であった小川記念館が収集されたもので、巴水の画業最初期の《井の頭の残雪》(1920)に始まり《芝増上寺》(1925)などの代表作を含み、絶作とされる1957年の《平泉金色堂》まで、各年代の作品が満遍なく集められています。保存状態も良く、川瀬巴水の全体像を紹介するにふさわしいコレクションといえます。

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