平成16年春の企画展 地元南画の巨匠ー 白井永川・白井青淵 展
展示期間 平成16年3月25日(木)〜5月16日(日)
開館時間 午前9時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 毎月曜日(但し、5月3日は開館し、5月6日に休館します)
 豊橋南宗画会を創立した父の白井永川と前羽田八幡宮宮司で、中部日本南画院主宰の青淵の企画展です。
 永川は、明治17年(1884)、渥美郡花田町大塚(現豊橋市西羽田町)に生まれ、18歳で牟呂八幡宮宮司森田緑雲に国学と画を学びます。32歳で豊橋で最初の日本画団体である豊橋南宗画会を創立し、南画の隆盛につとめます。38歳で牟呂八幡宮社司となり、社務所の一室を霊雲深處と号して画室にします。昭和17年(1942)、58歳で亡くなります。
 青淵は、明治42年(1909)、永川の長男として生まれ、神職を志すとともに父に日本画を学びます。20歳で羽田八幡宮宮司となり、38歳で中村岳陵に師事し、40歳で日展に初入選し、以後、同展に4回入選します。51歳で中部日本南画院を創設し、80歳で豊橋文化賞・愛知県文化功労褒状を受賞します。
 父子お二人の丹精を込めた作品をゆっくりとご観賞ください。

白井永川[しらいえいせん]
白井永川◎明治17年(1884)〜昭和17年(1942)
 渥美郡花田町大塚(現在の豊橋市西羽田町)に農業を営む白井勝平の長男として生まれ、名は儀三郎、字は義人、永川と号した。18歳頃、渡辺小華の弟子で、牟呂八幡宮の神主であった森田緑雲について南画と国学の教えを受けた。緑雲の勧めで、神職を志し、明治42年に25歳で花田町素鳴神社、飯村熊野神社、大村八所神社ほか数社の社掌を拝命した。神職と画の勉強以外に、蜜柑園を耕作し、家の周りがミカン畑であったので、この頃の堂号を甘林園と号した。
 大正6年(1917)、師の緑雲没後、東三河南画界の若手として活躍していた永川は弟子たちと豊橋南宗画会を創立し、後進を育成し、南画の興隆に努めた。従兄弟の白井烟狽ェ大正9年の第2回帝展に初入選すると、出身地の豊橋でも南画の機運は大いに高まり、画家を目指す若手は東京や京都へと居を移した。大正11年には、永川は牟呂八幡宮の社司となった。牟呂八幡宮の境内は檜、杉、椎などの大木が茂り、昼も暗いため、社務所の一室を霊雲深處と号し、画室とした。永川は宗偏流(宗偏流)の茶道を修め、霊雲深處に来客があると、抹茶を点てていた。大正末期には、永川は豊橋画壇の中心となったが、豊橋南宗画会はその機能を失い、展覧会を催すことはなかった。昭和8年(1933)に、豊橋南宗画会は南画団体の墨友会と合同で、豊橋日本画協会を発足させ活動を再開した。さらに、洋画家も加え、豊橋美術協会となり、豊橋美術展が開催されるようになった。
  昭和15年(1940)に脳出血で倒れる前には、写生を基調とした花鳥画を制作し続けていた。倒れてのちは、残念ながら筆をとることはできず、昭和17年に再発し、帰らぬ人となった。
 若い頃には、松坂眠石に篆刻を学び、大正12年の関東大震災で烟狽フ友人らが画印を焼失すると、印を刻して贈った。烟狽ノは「存其心養其性」と朱文で刻した遊印を贈り、烟狽ヘこれを終世愛用した。

白井青淵[しらいせいえん
白井青淵◎明治42年(1909)〜
 豊橋市西羽田町に白井永川の長男として生まれ、名は義美、青淵と号した。県立豊橋中学校(現県立時習館高等学校)を卒業後、牟呂八幡宮の社司であった父の白井永川について、神職を志すとともに南画の指導を受けるようになった。昭和4年(1929)に20歳で牟呂八幡社、次いで、羽田八幡宮の宮司に就任した。昭和18年には、京都の水田竹圃に師事し、南画を学ぶ。昭和23年には豊橋市出身で、前年に日展初入選を果たした中村正義に連れられて上京し、当時、日本芸術院会員として日展で審査員や理事をつとめていた中村岳陵に師事し、蒼野社(そうやしゃ)に入門した。昭和25年、40歳で第6回日展に「駅構内」(豊橋市美術博物館蔵)が初入選を果たした。以後、第7回「驛附近」、第8回「給油所」など同展に4回入選する。
 昭和33年に中村岳陵塾である蒼野社を退き、活躍の場を豊橋へ置き、宗墨会創始者である高橋清紡没後、顧問として南画を教える。昭和35年に51歳で、中部日本南画院を創立し、以後毎年2回の展覧会を続け、父永川と同様に、後進を育成し、南画の興隆に努めている。昭和55年に中国桂林への写生旅行を実施したのを皮切りに、つい最近まで毎年のように中国・韓国・日本各地を訪ね、写生を行い、作品を発表し続けている。昭和61年には豊橋市美術博物館で白井青淵展を開催した。平成元年(1989)には、豊橋文化賞を受賞し、羽田八幡宮境内に中部日本南画院により筆塚が建立された。同年、愛知県知事より文化功労褒状を受けた。平成7年からは中部日本南画院の主宰に就任した。

白井永川:作品リスト
No. 作品名 年代 材質 単位(cm) 備考
1 香魚図 昭和 紙本着色 15.1×47.1 扇面貼込
2 蔬果図 昭和 紙本着色 15.5×51.6 扇面貼込
3 闔家全慶之図 明治43年 絹本着色 128.9×49.4  
4 漁艇図 大正2年 紙本墨画 126.6×31.4  
5 秋景山水之図 大正6年 紙本着色 130.2×47.1 平成3年青淵題
6 巌上孔雀之図 大正9年 絹本着色 158.7×56.1  
7 春庭香艶之図 大正 紙本着色 130.3×49.9  
8 秋菊之図 大正 紙本着色 136.7×33.5 平成5年青淵題
9 梅図 昭和4年 紙本着色 134.0×33.6  
10 水墨山水之図 昭和6年 紙本墨画 133.4×45.0  
11 牡丹図 昭和7年 絹本着色 128.4×30.3 昭和51年東三河日本画家遺墨展 東三河の美術
12 古木春雪之図 昭和 紙本着色 130.3×32.4  
13 松に鶴図(瑞鶴之図) 昭和11年 絹本着色 127.4×42.4 昭和63年青淵題 東三河の美術
14 花菖蒲之図 昭和 絹本着色 33.3×42.0  
15 白木蓮小禽図 昭和 絹本着色 46.3×56.8 昭和60年青淵題
16 春暖之図(桃に鳩) 昭和14年 絹本着色 46.9×57.3 東三河の美術
17 印顆「存其心養其性」 大正     白井烟蝿、用品
※作品保護のため、一部展示替を行います。

白井青淵:作品リスト
No. 作品名 年代 材質 単位(cm)
40 竹林 昭和27年 衝立 120.0×136.0
75 昭和 51.0×45.0
1 大王崎 昭和37年 92.0×113.0
2 信濃所見 昭和49年 150.0×88.0
3 洛北春雪 昭和50年 112.0×134.0
46 若狭路 昭和50年 73.0×91.0
5 斑鳩所見 昭和51年 88.0×112.0
6 松径 昭和52年 133.0×167.0
8 北設早春 昭和53年 116.0×85.0
9 泰山湧雲 昭和54年 134.0×84.0
10 野柳漁村 昭和54年 142.0×115.0
76 五箇山 昭和54年 91.0×116.7
11 佐渡姫津港 昭和55年 73.0×93.0
12 渝州 昭和55年 114.0×96.0
13 五ヶ所湾 昭和55年 120.0×148.0
47 桂林 昭和55年 92.0×73.0
14 湖北 昭和56年 117.0×134.0
15 桜島 昭和56年 105.0×142.0
16 東大寺 昭和56年 81.0×93.0
19 慶州古寺 昭和57年 100.0×135.0
20 蘇州所見 昭和57年 103.0×157.0
21 長崎 昭和58年 135.0×99.0
24 漓江 昭和59年 97.0×116.0
25 慶州秋色 昭和59年 124.0×138.0
26 昆明 昭和59年 141.0×116.0
27 豊橋公園B 昭和59年 98.0×116.0
28 上海所見 昭和59年 134.0×98.0
29 木曽路 昭和60年 115.0×141.0
30 桂林 昭和60年 125.0×82.0
31 白川郷A 昭和60年 115.0×141.0
32 五亭橋 昭和60年 106.0×141.0
33 去燕来雁 昭和60年 90.0×115.0
34 重慶暮色 昭和60年 115.0×141.0
35 放鴨 昭和60年 115.0×141.0
36 豊橋公園A 昭和60年 98.0×116.0
37 開封 昭和60年 115.0×141.0
48 美山所見 昭和60年 97.0×130.0
38 白川郷B 昭和61年 100.0×135.0
49 佐久所見 昭和61年 91.0×117.0
50 男鹿半島 昭和62年 91.0×65.0
51 設楽春信 昭和62年 91.0×107.0
52 成都 昭和62年 85.0×115.0
53 浅間山 昭和62年 73.0×91.0
54 紹興所見 昭和63年 91.0×116.0
55 開田高原 昭和63年 91.0×117.0
56 黄山 昭和63年 二曲一隻屏風 172.0×172.0
57 成都郊外 昭和63年 91.0×117.0
77 能登漁港 昭和 60.0×72.0
58 越前海岸 平成元年 100.0×73.0
59 常滑 平成元年 102.0×97.0
60 常滑 平成元年 107.0×80.0
61 開田高原 平成元年 91.0×65.0
62 石槌山 平成元年 91.0×65.0
63 桂林 平成2年 117.0×80.0
64 川売所見 平成2年 117.0×80.0
65 望月所見 平成2年 91.0×65.0
66 信濃秋景 平成2年 91.0×65.0
67 屯溪 平成2年 80.0×116.0
78 洋梨 平成2年 53.0×45.0
69 昆明裏街 平成3年 80.0×116.0
71 桂林奇峯鎮 平成3年 二曲一隻屏風 174.0×170.0
74 蘇州三題C 平成3年 91.0×116.7
79 屯溪所見 平成5年 60.0×91.0
80 黄山所見 平成5年 130.0×89.0
81 寧波B 平成6年 130.0×96.0
82 蘇州所見 平成8年 87.0×128.0
83 杏の里 平成12年 91.0×65.0
       
  絵馬      
  印顆      

春暖之図(桃に鳩)  昭和14年


北設早春 昭和53年
※No.74までは図録掲載しています。

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